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効率化の時代に、あえて“紙”で届けるワクワク。フリーペーパー制作団体mocoが紡ぐ「ぐんと上がる瞬間」

ぐんと上がる瞬間をあなたに

京都の学生に向けて、年に3回、フリーペーパーを作り続けている団体があります。一回、二回生を中心に活動するフリーペーパー制作団体「moco」。活字離れやデジタルの時代など、そういった大きな話の前に、mocoの皆さんが大切にしているのはもっと身近なワクワク感です。

彼らが掲げるコンセプトは、「ぐんと上がる瞬間をあなたに」。学生独自の視点から日常の小さな幸せにクローズアップした一冊を、17年間京都、大阪、関西一帯のカフェや古本屋さんに自分たちの足で届け続けています。

制作の裏側にある情熱や、彼らが見つけた紙ならではの価値について、メンバーの今井さん、鈴木さん、入江さんの3人にお話を伺いました。


プロフィール

学生団体 moco 2009年設立。立命館大学の学生を中心に、京都の大学生をターゲットにしたフリーペーパーを年3回発行。企画、取材、撮影、デザイン、配布場所の開拓まで、すべて学生の手で行っている。

今井さん(2回生) 6歳上の姉がmocoに所属していた影響で入会。制作時にメンバーと「かわいい!」と言い合う瞬間が活動の原動力。

鈴木さん(2回生) 高校時代に自習施設でmocoに出会い、雑誌制作への憧れから入会。デザインやアイデアを形にすることに情熱を注ぐ。

入江さん(2回生) 「何かを始めたい」という思いで秋から途中入会。みんなで楽しむロケの時間を大切に、その楽しさを読者に届けながら活動中。

インタビュアー CIL(Community Interaction Laboratory) 学生団体と地域を繋ぎ、自発的な活動を支援するプロジェクトチーム。


「ぐんと上がる瞬間」を届ける――日常を彩るポジティブな“きっかけ”

――mocoさんが大切にしているコンセプト「ぐんと上がる瞬間をあなたに」とは、具体的にどのような想いが込められているのでしょうか。

鈴木: 難しい質問ですが、実はそんなに「大層な意味」ではないんです。読者がmocoをパラパラと読んだ時に、「ちょっと気分が上がったり、京都での大学生活を少しだけポジティブに思えたりする」。そんな、日常の小さな幸せの“きっかけ”になればいいなという想いで作っています。

入江: 私たち自身、もともとはmocoの読者として「楽しそうだな」「ワクワクするな」と感じて入会したメンバーばかりです。自分たちが受け取ったそのポジティブなエネルギーを、今度は新しい読者へ繋いでいきたい。だからこそ、紙面の細かいところまで「どうすればワクワクしてもらえるか」を突き詰めて考えています。

今井: 私は、自分が担当した企画に全力で向き合い、読者から「めっちゃいいな」と褒めてもらえたり、こだわった部分に気づいてもらえたりした時に、このコンセプトが形になった実感が湧きます。

――最新号のテーマは「光跡」だそうですね。企画はどのように決まっていくのですか?

入江: 企画会議は、みんなの「やりたいこと」をぶつけ合う熱い場です。1人ずつ企画書を書いてきて、順番に発表していくんです。例えば「街歩きをしたい」とか「夏だからかき氷を巡りたい」といった、それぞれの好奇心を企画に落とし込んでいきます。予定では2時間の会議が、気づけば3時間を超えていることもよくあります(笑)。

鈴木: でも、その時間が本当に楽しいんです。自分のアイデアに対して、みんなが「それいいね!」と褒めてくれる。その肯定感が自信に繋がって、「もっと面白いものを届けよう」というモチベーションが“ぐんと上がる瞬間”に繋がっています。


mocoならでは「共同制作」が生む、代えがたい達成感

――紙面づくりで、それぞれが好きな工程を教えてください。

鈴木: 頭の中でやんわりと考えていたアイデアを、仲間とブラッシュアップして具体的な「物」として目に見える形にできるのが、一番のやりがいです。撮影から編集、そしてアドビのイラストレーターというプロ仕様のソフトを使ったデザインまで、すべて自分たちで一貫して行っています。

今井: 私は、みんなが作ってきたページを最後に突き合わせるタイミングが一番好きです。それぞれの個性が爆発した「最高のページ」が集まって一冊の形になるのを見ると、本当に「かわいい!」って言い合っちゃいます。

入江: 私は「ロケ(取材)」が好きですね。みんなで美味しいものを食べたり、写真を撮ったり。作業というより、自分たちが全力で楽しんでいるそのテンションを、そのまま紙面に載せることを大切にしています。

――紙だからこその苦労や、意識されていることはありますか?

今井: 「紙に印刷してしまったら、後から編集ができない」。これはデジタルの発信とは大きく違う点です。だからこそ、情報の正確さには何回もチェックを入れますし、自分たちの言葉で正しく魅力を伝えることに強い責任感を持っています。

鈴木: インタビューをする時も、相手の魅力を最大限引き出せるように、自分がシンプルに「聞きたい」と思う好奇心を大切にしています。学生同士だからこそ聞ける、深い内容を届けたいですね。


自分の足で届ける「セレンディピティ(偶然の発見)」

――今の時代、ネットで発信すれば一瞬で情報は世界中に届きます。それでもあえて、自分たちの足で「手渡し」や「設置」することにこだわる理由はどこにあるのでしょうか?

入江: はい。私たちは完成した冊子を、京都や大阪、関西一帯の古本屋さんやカフェなどに、自分たちで一軒一軒置きに行っています。そこには、創設期から先輩たちが17年かけて築き上げてきた大切な「場所」のリストもあれば、自分たちで新しく「ここに置かせてください」と飛び込みで交渉することもあります。

鈴木: 効率だけを考えれば非効率かもしれません。でも現代では、ネットで調べると自分が興味のある事しかながれてこないですよね。AIがデータを返してくれる便利な世の中ですが、それでは「自分たちが頭の中で考えたことのアウトプット」や「予想外の刺激」が削ぎ落とされてしまう。でも、お店にふらっと置いてあるmocoを偶然手に取ったとき、自分では検索しなかったような世界に不意に出会えることがあります。

――「無駄に見える工程」をあえて踏むことで、新しい気づきや繋がりを「循環」させているのですね。

今井: そうなんです。イベントに出展した際などに、地域の方から「いつも読んでます」と直接声をかけてもらえたり、それこそ10年以上前のmocoに所属していた大先輩に偶然お会いして「まだ続いていてくれてありがとう」と言っていただけたりすることもあります。これはデジタル上の数字(閲覧数)では決して得られない、紙という物理的な「物」が媒介となって、世代や場所を超えた繋がりが可視化される瞬間です。その手触り感のある繋がりを感じられるのが、本当に嬉しいんです。


効率を超えた先で、五感を磨くことアウトプットすることの意義

――現代ではAIの台頭により、効率的に文章やデザインを生み出せるようになりました。その中でmocoさんの活動が持つ「意味」をどう捉えていますか。

入江: 私はもともと、課題もAIで済ませてしまうようなタイプの学生でした。でも、mocoに入って「みんなに負けないように自分で考えなきゃ」と思うようになってから、日常の何気ない物事に対しても「これ企画に使えるかな?」と深く考えられるようになりました。この「手間をかけて思考する時間」こそが、人としての成長に繋がっていると感じます。

鈴木: 効率を求めれば、AIに任せた方が早いかもしれません。でも、自分たちが頭の中で考えたことを、試行錯誤して物理的な形に「アウトプット」することに意味があるんです。「五感」がキーワードだと思っていて、調べれば何でも出てくる時代だからこそ、実際に足を運び、写真を撮り、紙という「物」として残す過程すべてが価値になります。

今井: 五感と言えば、紙は「読んでみて」と直接渡せるし、アイテムとしても愛着が湧きます。ネットの情報は流れていってしまいますが、紙はそこに残り続けます。そういうところに私は「意味」を感じています。

――「無駄」に見えるかもしれないその手間が、新しい気づきや繋がりを循環させているのですね。

鈴木: そうですね。自分たちが選んだテーマ、自分たちが撮った写真、それらが一冊にまとまって、街に配られ、また誰かの「ぐんと上がる瞬間」に繋がっていく。この循環の中に身を置けることが、mocoの一番の魅力です。

入江: 1人じゃ絶対にできないことも、みんなでやるからこそ、多角的な視点で磨かれ、最高のものが出来上がる。この制作プロセスこそが、私たちが一番大切にしたい「効率を超えた豊かさ」なんだと思います。

17年間の「光跡」ー今までも、これからも変わらない想いー

2009年から17年間、様々な人の想いから紡がれ続けているmoco。その原点は今も、CILが目指す「団体と団体、人と団体を繋ぐ」という活動と近いところにある。17年間続いてきたからといって、順風満帆なわけではない。今の代のメンバーは6人。「実は今、結構存続危機なんです。」と打ち明けてくれた。後輩が入ってこず、なかなか苦戦しているという。それでも誰でも歓迎するというやり方は取らない。Zoomでの説明会のあと見学に来てもらい、お互いにミスマッチがないかを確かめてから入会を決めてもらう。「ちゃんと考えて、真面目に続けてくれる人に入って欲しい。」という真摯な姿勢が、17年間続いてきた理由の一つかもしれない。


本記事は、学生団体「moco」メンバーへのインタビューをもとに構成しています。 mocoでは、自分たちの手で「物」を作り、誰かの日常を彩りたい学生を募集中です。興味のある方は、ぜひ公式SNSをチェックしてみてください。デジタルネイティブな今だからこそ味わえる、紙媒体の深い世界が待っています

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